私たちはなぜ業界用語を使うのか?
- yotahathi
- 5月10日
- 読了時間: 3分

「じゃあそこ、バミっといて」「マイクスタンドは下手(しもて)舞台袖へお願いします」
初めて現場に入ったとき、飛び交う言葉の意味がわからず戸惑った経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
どの業界にも、内輪で使われる専門用語は存在すると思いますが、特に音響・映像・照明などの“裏方業界”においては、その数がとても多いように感じます。
では、なぜこれほどまでに業界用語が使われるのでしょうか。

1.テンポを保つための「省略表現」
現場では常に時間との戦いです。「床にテープで目印をつけてください」と言うより、「バミってください」の方が圧倒的に早く、伝わりやすい。短く端的に伝えることで、作業が円滑に進むという利点があります。
2. 共通認識を生む「専門用語」
たとえば「袖スピーカー、逆相っぽいのでチェックお願いします」といった一言で、状況や確認すべきポイントが即座に共有されるのは、プロ同士だからこそ成り立つ共通言語。複雑な作業を瞬時に連携できるのは、現場にとって大きな強みです。
3. 文化として根づく「現場の言葉」
業界用語には、長年その仕事に携わってきた人々の知恵や文化が凝縮されています。言葉を覚え、使いこなすことで「現場の一員」としての意識が芽生えることも少なくありません。
4. 言葉の背景にある「現場の歴史」
これらの業界用語が生まれた背景には、限られた時間と人員で正確に進行する必要があった現場特有の事情があります。業界用語は単なる略語ではなく、「現場を安全かつスムーズに回すための“生きた知恵”」なのです。こうした用語の多くは、先輩から後輩へ、経験から経験へと自然に受け継がれ、今の形にまで発展してきました。
ただし、業界用語は便利な一方で、外部の方や経験の浅いスタッフにとっては混乱を招く要因にもなります。
さらに、意味を誤って使ってしまうと、意思疎通がかえって難しくなる場合もあるため、常に言葉の使い方を見直し、ブラッシュアップしていく姿勢が求められます。
そして、私たち自身「ついわかる人だけがわかる言葉」を無意識に使ってしまいがちであることにも注意が必要です。専門用語の多用が円滑な進行を妨げてしまう可能性もあります。
状況に応じて言葉を使い分けたり、必要に応じて丁寧に補足するなど、「現場をどうスムーズに進めるか」を柔軟に考えることが大切だと感じています。
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弊事務所のホームページでは、そうした用語に不安を感じる方のために、よく使われる業界用語集を公開しています。
これから現場に入る方や、興味をお持ちの方は、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
また、この記事をご覧の皆さまの業界でも、「これ、うちでは当たり前だけど他では通じないかも?」という言葉があれば、ぜひ教えていただけると嬉しいです。
業界を超えて“言葉”を共有し合うことで、新しい気づきが生まれるかもしれません。
![]() | 執筆者プロフィール: 知久 陽太(トモヒサ ヨウタ) UTAO STUDIO 代表 大学時代に音響を学ぶ部活に入部したことをきっかけに音響業界に身を投じる。現在、UTAO STUDIOの代表として、ライブハウスやホテルでの音響業務をはじめ、YouTube配信やZoomウェビナーといったWeb中継業務にも幅広く対応し活躍中。多様なジャンルでの経験を活かし、質の高い音響サービスを提供する一方で、趣味としてDJを行う一面もあり。また、PCを活用した動画編集やデザインにも得意で、クリエイティブな視点での音響制作に力を入れている。 |
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