3DプリンターでBlackmagic Designコンバーター用収納トレイを作ってみた話
- 6月2日
- 読了時間: 7分

最近買って良かったもののひとつが、3Dプリンターです。すっかりハマってしまって、時間があると何かしら印刷したり設計したりする日々です。
最初は単純に趣味として始めたのですが、使っているうちに「これって今の仕事にも活かせるんじゃないか?」と思うようになりました。
例えば、配信や映像制作の現場で使うコンバーターや変換機器の収納ケース、機材を保護するための緩衝材等を作ったら役に立ちそうです。
市販品ではなかなかちょうどいいサイズのものが見つからないことも多いので、「それなら自分で作ればいいじゃないか」と思い、今回挑戦してみることにしました。
3Dプリンター初心者の方は、3Dデータ配布サイトからデータをダウンロードして印刷するところから始めることが多いと思います。
公開されているデータを印刷するだけでも十分楽しいですし、初心者でも簡単に様々なものを作ることができます。
ただ、続けているとだんだん欲が出てくるのです。
「ここをもう少し大きくしたい」
「この部分の形を変えたい」
「自分の機材にぴったり合うものが欲しい」
そんなことを考え始めるんですね。
そうなると必要になるのがCADソフトです。CADソフトを使えば、自分で3Dデータを設計し、そのまま印刷することができます。私も公開されているデータだけでは満足できなくなり、少しずつCADの勉強を始めました。
最初は家庭内で使うちょっとした便利グッズを作りながら練習していたのですが、今回満を持して、仕事で使う機材の収納トレイ作りに挑戦してみました。
ところが、これが思っていた以上に大変だったのです。
試作1号機(TPU)

まず最初に考えたのは、「機材を保護するものだから柔らかい素材がいいだろう」
ということ。そこでTPUというフィラメントを使いました。
フィラメントは3Dプリンターにとってのインクのような存在で、素材によって性質が大きく変わります。
TPUはゴムのように柔らかく、クッション性が高い素材です。
その代わり、
印刷速度が遅い
湿度に弱い
印刷難易度が高い
という特徴があります。
実際に印刷してみると、なんと完成まで約16時間。
時間をかけて印刷すれば良いじゃないかと思われるかもしれませんが、これがなかなか一筋縄ではいきません。
TPUは扱いが難しく、長時間印刷していると途中でフィラメントがうまく送られなくなったり、印刷不良が起きたりします。
写真を見ていただくと分かるのですが、試作1号機は印刷の途中で止まってしまい、完成までたどり着くことができませんでした。
さらに悪いことに、フィラメントがプリンター内部で詰まってしまい、復旧のために3Dプリンターを分解して修理を行う羽目に…。
おかげで3Dプリンターの構造を学ぶという貴重な経験はできたのですが、正直なところ「もう二度とやりたくない」という気持ちの方が大きい。
私が使用している「Bambu Lab A1 mini」というプリンターは手頃な価格でありながら
本当に優秀なプリンターなのですが、大きなサイズのTPU印刷となると少し厳しい印象です。
もちろん設定や環境を追い込めば成功率を上げられるのかもしれませんが、仕事で使うものを作る以上、安定して作れないと意味がありません。
そして何より、1回16時間かかる印刷が失敗すると精神的ダメージが大きい。
「柔らかい素材で作りたい」という理想はあったのですが、現実的ではないという結論に至り、TPU案はここで断念することにしました。
試作2号機(PETG)

TPUを断念したあと、次に選んだのがPETGというフィラメントでした。
PETGは3Dプリンター用の素材の中でも比較的バランスが良く、
・十分な強度がある
・熱に比較的強い
・印刷の成功率が高い
という特徴があります。
TPUのようなゴムのような柔らかさはありませんが、その代わり機材をしっかり支えられる硬さがあります。
また、現場で使う機材はケースの中で多少ぶつかったり押されたりすることもあるため、ある程度の強度も必要です。
「クッション性よりも、まずは安定して作れることを優先しよう」ということで、今回はPETGを採用することにしました。
実際に印刷してみると、TPUのときとは違って驚くほど順調。
印刷時間も短くなり、途中で失敗することもなく、かなり綺麗に仕上がりました。
ところが、ここで思わぬ問題が発生しました。
機材がピッタリ入りすぎている。
収納はできるが取り出しづらい。
現場で使う機材ケースは、
・入れやすい
・出しやすい
この両方が重要です。
当たり前の話なんですが、モデリングを行っているとつい「ちゃんと収まるか」ばかりに意識が向いてしまいます。結果として、あまりにもジャストサイズな収納ケースが完成してしまいました。
このとき初めて、「収納できること」と「実際に使いやすいこと」は別問題なんだということを学びました。そして、ただモデリングを行うだけではなく、実際に現場で使用するとどのようなことが起こるのかを想像しながら設計を行うことの難しさを実感しました。
試作3号機

そこで取り出しやすいように指を掛ける切り欠きを追加。
これで完璧かと思ったのですが、また問題発生。
今度はクリアランス不足です。
CAD上では同じ寸法でも、実際の3Dプリントにはわずかな誤差が生じます。
2号機ではたまたま問題なかった部分が、3号機では誤差の影響を受けてしまいました。
機材は入るし、取り出せるが あまりにもギチギチすぎる。
結局また取り出しづらい。 この時初めて知ったのですが、3Dプリンターは設計図通りに100%の精度で出力されるわけではありません。素材の収縮や積層時の誤差によって、わずかに寸法が変わることがあります。 CAD上では問題なく入るはずだったのですが、実際に印刷してみると想像以上にタイトな仕上がりになっていました。
「設計」と「現物」は別物。クリアランスの重要性を痛感しました。
4号機…ついに完成。

これまでの反省点をすべて反映。
TPUをやめてPETG採用
指を掛ける切り欠きを追加
クリアランスを見直し
取り出しやすさを重視
そしてようやく完成。
現場でも問題なく使えそうな仕上がりになりました。
いままで機材管理ケースとして使用していた100均のケースにもぴったりハマっているのが写真から見て取れますよね。
やってみて思ったこと
3Dプリンターは「印刷するだけ」なら簡単です。
でも実際に仕事で使う道具を作ろうと思うと、
素材選び
強度
印刷時間
寸法誤差
取り出しやすさ
現場での使い勝手
など、考えることが本当にたくさんあります。
今回の収納トレイも、最初はすぐ作れると思っていました。
しかし実際にはかず多くの試作を経てようやく完成。
それでも、自分の現場にぴったり合ったものが作れるのは3Dプリンターならではの面白さだなと改めて感じました。3Dプリンターが単なる趣味の道具ではなく「現場の困りごとを解決する道具」へと昇格した瞬間です。次は他の機材用の収納パーツにも挑戦してみようと思います。
![]() | 執筆者プロフィール: 知久 陽太(トモヒサ ヨウタ) UTAO STUDIO 代表 大学時代に音響を学ぶ部活に入部したことをきっかけに音響業界に身を投じる。現在、UTAO STUDIOの代表として、ライブハウスやホテルでの音響業務をはじめ、YouTube配信やZoomウェビナーといったWeb中継業務にも幅広く対応し活躍中。多様なジャンルでの経験を活かし、質の高い音響サービスを提供する一方で、趣味としてDJを行う一面もあり。また、PCを活用した動画編集やデザインにも得意で、クリエイティブな視点での音響制作に力を入れている。 |





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