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「いい音」とは何か?〜PAは自己満足になってはいけない〜

  • 5月13日
  • 読了時間: 3分

「いい音ですね」


音響の仕事をしていると、とてもよく耳にする言葉です。ですが私は、この「いい音」という言葉ほど曖昧なものはないと思っています。


人によって、“いい音”の定義は違います。


低音がしっかり出ている音を「良い」と感じる人もいれば、高域がきらびやかな音を好む人もいます。


例えば趣味のオーディオの世界では、


・温かみがある

・空気感がある

・臨場感がある

・音に色気がある


といった、曖昧な表現で“聴いていて気持ちいい音”が重視されることが多いと思います。


ですが、PA(音響・配信・イベント)の現場で求められる“いい音”は、少し違うと私は感じています。



PAにおける「いい音」


私は、「いい音」という言葉をもっと具体的に考えるべきだと思っています。


PAにおける「いい音」とは…


・演者が話しやすい

・演奏しやすい

・聴き手が聞き取りやすい

・長時間でも疲れにくい

・ハウリングやノイズが少ない


そんな、“音を意識させない音”なのではないでしょうか。本当に良いPAは、もしかすると存在感を感じさせないPAなのかもしれません。


音響そのものではなく、演奏や言葉、空間体験に自然と没入できる。その状態を作り出すことこそ、PAの役割なのだと思います。



「大きい音」と「良い音」は違う


映画館ではかなり大きな音が鳴っているのに、不思議と耳が痛くならないことがあります。逆に、そこまで大音量ではなくても、妙に疲れる音に出会うこともあります。


これは単純な“音量”の問題ではありません。


・高域が強すぎないか

・バランスが崩れていないか

・ハウリング寸前になっていないか

・言葉が明瞭に聞こえるか


そういった積み重ねが、「聞きやすさ」を大きく左右します。


最近は、低音の“振動感”や身体で感じる音の重要性も強く感じています。

ただ、それを理想的に再現するのは簡単ではありません。


だからこそ、まず大切なのは「不快感や違和感を作らないこと」だと思っています。



PAひとつで、イベントの印象は変わる


以前、小規模なイベントで音響が十分に調整されていない現場に立ち会ったことがありました。


出演者の方々はとても素晴らしく、内容も魅力的でした。ですが、ハウリングや聞き取りづらさが目立ってしまい、せっかく楽しみに来ていたお客さんたちが少し残念そうに見えたのです。


その時、改めて感じました。


「PAの仕事は、とても大事なんだ」と。


どんなに素晴らしい演奏や企画でも、音環境ひとつで“伝わり方”は大きく変わってしまう。PAは演者と観客を繋ぐ“橋”のような役割を持っているのだと思います。


PAは自己満足になってはいけない。主役は機材でも、オペレーターでもなく、その場で生まれる体験そのものです。


音響は目立たなくていい。けれど、その場の“伝わり方”を支える、とても大切な仕事なのだと思います。



執筆者プロフィール:

知久 陽太(トモヒサ ヨウタ)

UTAO STUDIO 代表

大学時代に音響を学ぶ部活に入部したことをきっかけに音響業界に身を投じる。現在、UTAO STUDIOの代表として、ライブハウスやホテルでの音響業務をはじめ、YouTube配信やZoomウェビナーといったWeb中継業務にも幅広く対応し活躍中。多様なジャンルでの経験を活かし、質の高い音響サービスを提供する一方で、趣味としてDJを行う一面もあり。また、PCを活用した動画編集やデザインにも得意で、クリエイティブな視点での音響制作に力を入れている。


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