パソコンの映像がスイッチャーに入力できない?意外なHDCPの落とし穴とその対処法
- yotahathi
- 6月13日
- 読了時間: 3分

映像配信やプレゼン現場で、「MacをHDMIでスイッチャーに繋いだのに画面が映らない」というトラブルに遭遇したことはありませんか?
ケーブルの接触不良や断線といった単純な原因ではないのに、画面が一瞬映ったあとにブラックアウトしてそのまま表示されないといった現象――。
この原因のひとつとして挙げられるのが、HDCP(著作権保護)信号の影響です。

HDCPって何?なぜMacで発動するのか
HDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)は、ビデオ再生機器からディスプレイなどの表示機器にデジタル信号を送る際、その経路を暗号化し、映画やストリーミングコンテンツが不正にコピーされるのを防止するための著作権保護技術で、特にiTunesやNetflixなどでよく使われています。
ただし、Macではコンテンツの種類にかかわらず、HDCPが“意図せず発動する”ことがあるのが厄介なポイントです。
以下のような条件でHDCP信号が出力されるケースがあります:
・macOSやM1/M2チップの仕様による自動制御
・変換アダプタや接続先モニターがHDCP非対応または誤認識される
・EDID(モニターの情報)取得に失敗してMacが安全策としてHDCPを有効化する
これにより、ストリーミング映像ではなく、ただのKeynoteスライドやデスクトップ画面すら映らないという現象が起こります。
解決策:HDCPキャンセラー/スプリッターの活用
こうしたケースでは、HDCP回避ができるHDMIスプリッターを間に噛ませることで、HDCPの影響を回避し、安定した映像出力が可能になります。
特に現場では…
・機材構成を毎回細かくチェックする時間がない
・映像が「出ない」こと自体が大問題になる
といった事情もあり、事前にこうしたトラブルを予防できる機材の導入は必須です。
Roland系スイッチャーの「HDCP入力モード」の注意点
一部のスイッチャー(特にRoland製に多い)では、HDCP信号を自動検出して「HDCP入力モード」で入力を受け付ける機能があります。
便利な機能ではありますが、このモードを使うと、著作権保護の規格上の制限により、スイッチャー側の一部アウトプットから映像が出力されなくなる場合があります。

安定出力のために準備しておきたいこと
MacからのHDMI出力を安定させるには、以下のような準備がおすすめです。
・信頼性の高いUSB-C → HDMI変換アダプタを使用。
Belkin、Anker、Apple純正などを推奨
・HDCP回避ができるHDMIスプリッターを間に入れる。
モニター誤認識防止+信号安定化
HDCPとの付き合い方を知っておくと安心
MacでHDMI出力を使用する場合、映像コンテンツの有無に関係なくHDCPが発動する可能性があるという前提で機材構成を考えておく必要があります。
しかもこの問題は、環境やタイミングによって再現性がなく、不規則に発生することもあるため、現場では特に注意が必要です。
「万が一映らなくてもすぐ対処できる」機材や知識を備えておくことは、安定した映像運用のための必須スキルともいえます。
現場トラブルを未然に防ぐためにも、「事前に持ち込まれるPCの種類をヒアリングしておく」「HDCPキャンセル対応機器を1つ常備しておく」「スイッチャーに間違いなく入力可能な予備のPCを持ち込んでおく」などの対策を行っておくことを強くおすすめします。
![]() | 執筆者プロフィール: 知久 陽太(トモヒサ ヨウタ) UTAO STUDIO 代表 大学時代に音響を学ぶ部活に入部したことをきっかけに音響業界に身を投じる。現在、UTAO STUDIOの代表として、ライブハウスやホテルでの音響業務をはじめ、YouTube配信やZoomウェビナーといったWeb中継業務にも幅広く対応し活躍中。多様なジャンルでの経験を活かし、質の高い音響サービスを提供する一方で、趣味としてDJを行う一面もあり。また、PCを活用した動画編集やデザインにも得意で、クリエイティブな視点での音響制作に力を入れている。 |
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